開発した牛白血病ウイルス対策技術を社会実装する 第7回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォームを開催

日時 2015年11月26日 
 本学は、11月26日に北海道ひがし農業共済組合(北海道標茶町)において、大切な家畜をウイルスから守るための方策を研究者と現場の人たちと共に考えるワークショップ「第7回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム -ウシ白血病ウイルス(BLV)から牛を守る革新的技術の社会実装に向けて-」を開催しました。

 農林水産の現場では、さまざまなウイルスによって経済的・社会的な損失が発生しており、世界的に大きな問題となっています。また自然界においても動物、植物が失われることが多く、自然・環境問題ともなっています。これらの状況を打開するため、さまざまなウイルス感染から動物、植物を守る早期診断法や感染防止の薬剤などの研究開発が強く求められています。

 今回のプラットフォームでは、研究拠点を務める岡山大学と補完研究機関である国立研究開発法人理化学研究所が密に連携し、北海道ひがし農業共済組合、釧路獣医師会、ねむろ獣医師会の共催協力を得て開催しました。

 畜産現場で大きなウェートを占める牛は、わが国のみならず世界の畜産業で極めて重要な家畜です。BLVは、牛の白血病に関与するウイルスとされており、BLVに感染し、発症した牛は予後不良となり、畜産現場の大きな打撃となってしまいます。今回、BLVの現状と対策の取り組み、そして新たに開発したBLVウイルス検出法について、その叡智の共有化と社会実装について、畜産現場の最前線で活躍する獣医師や家畜衛生保健所職員、農業共済組合らと議論を行いました。

 プラットフォームでは、まず革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)でコンソーシアム・プログラム・マネージャー(研究管理総括役)を務める佐藤法仁研究担当学長特命・URAが、同事業の概要と研究開発された成果物を効果的に現場に共有するための連携強化の重要性について説明しました。次に補完研究機関である国立研究開発法人理化学研究所分子ウイルス学特別研究ユニットの間陽子ユニットリーダーが、「牛の白血病の新しい克服戦略について」と題して、BLV感染の最新情報と本事業で完成させた新たな検査法による克服戦略について紹介しました。また、地方独立行政法人北海道立総合研究機構畜産試験場家畜衛生グループの小原潤子研究主査からは「牛白血病ウイルスの伝播リスク要因について」と題して、同機構での取り組みや問題点とその解決法など事例をもとに紹介しました。次に新たなBLV早期検査法である「BLV-CoCoMo-qPCR法」について、株式会社理研ジェネシスの村松祐理研究員と理化学研究所の竹嶋伸之輔研究員がその原理と検出法について、さまざまな事例を取り上げながら詳細に説明し、参加した獣医師や家畜衛生保健所職員、農業共済組合らとBLVの克服法や家畜現場での対策方法の効果的なあり方(社会実装化)などについて熱心に議論を重ねました。

 本ワークショップは、本事業において得られた最新研究の叡智を積極的に社会に広めるための取り組みとして実施されました。今後、新たに開発された「BLV-CoCoMo-qPCR法」を広く畜産現場等に社会実装させるため、関係機関との連携をさらに深め、大切な家畜の保護を精力的に押し進めて行きます。

 なお、本ワークショップは本学が研究拠点(代表研究者:本学大学院自然科学研究科(工学系)の世良貴史教授)を務める農林水産省「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)」において得られた最新研究の叡智を社会に広めるために実施する「革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム」の取り組みとして実施されました。

  農林水産省革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究):http://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html

 <参考:革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム>

第1回 網羅的RNAウイルス検出技術DECS法(2015年5月28~29日)

第2回 革新的技術でウイルス感染から家畜を守る-日中叡智共有化ワークショップ-(2015年7月20~22日)

第3回 低分子化リグニンがつくる新たなウイルス対策(2015年9月1~2日)

第4回 革新的技術で牛白血病ウイルス(BLV)感染から牛を守る(2015年10月11日)

第5回 革新的技術“人工核酸結合タンパク質”の国際展開の強化・促進(2015年10月25~28日)

第6回 低分子化リグニンによるウイルス対策技術の社会実装に向けた研究開発(2015年10月30~31日)

農林水産省事業異分野融合共同研究の展開と新たな家畜ウイルス対策の取り組みを説明する本学の佐藤法仁研究担当学長特命・URA

 
牛白血病の新しい克服戦略について説明する理化学研究所の間陽子ユニットリーダーと竹嶋伸之輔研究員(左)

BLVの伝播リスク要因について説明する北海道立総合研究機構畜産試験場の小原潤子研究主査

 

講演を熱心に聞くワークショップ参加者ら

パネルディスカッションで効果的なBLV対策について熱く議論する参加者ら

 

今回のワークショップの演者と共催関係者ら