第16回革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム「革新的技術で牛白血病ウイルス(BLV)から牛を守る」を開催

日時 2016年12月14日 
 本学が研究拠点を務める「革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム」は、12月14日、わが国の重要な畜産産業を動物ウイルスから守るためのシンポジウム「革新的技術で牛白血病ウイルス(BLV)から牛を守る」をホルトホール大分(大分市)で開催しました。
  農林水産・畜産の現場では、さまざまなウイルスによって経済的・社会的な損失が発生しており、世界的に大きな問題となっています。また自然界においても動物、植物が失われることが多く、自然・環境問題ともなっています。これらの状況を打開するため、さまざまなウイルス感染から動物、植物を守る早期診断法や感染防止の薬剤などの研究開発が強く求められています。
 今回のプラットフォームシンポジウムでは、本事業で取り組んでいる「牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus;BLV)」をテーマに、理化学研究所、農研機構生研支援センター、株式会社理研ジェネシス、株式会社微生物化学研究所、岩井化学薬品株式会社、株式会社ミクセルとの共催のもとに開催しました。
 シンポジウムでは始めに、コンソーシアム・プログラム・マネージャー(研究管理総括役)を務める岡山大学の佐藤法仁研究担当学長特命・URA兼内閣府科学技術政策フェローが、当分野での研究開発の取組やこれまで中国北海道標茶町東京岡山などでBLVに関する対策や知見向上のための場を設けてきたことを説明。今回のシンポジウムでも、より多くの現場の方々と意見交換を実施し、今後の研究開発強化促進に努めて行きたいと挨拶しました。
 講演では、北海道立総合研究機構畜産試験場の小原潤子研究主査が「牛白血病ウイルス伝播リスク要因」について、広島県立総合研究所畜産技術センター育種繁殖研究部の尾形康弘部長が「広島県における牛白血病ウイルスの清浄化対策の取り組み」について、北海道医療大学薬学部の岡崎克則教授が「牛白血病ウイルスTaxタンパク質のL233P変異と病原性」について、麻布大学獣医学部の村上裕信助教が「牛白血病ウイルスの病原性解析」について、理化学研究所分子ウイルス学特別研究ユニットの間陽子ユニットリーダーが「牛白血病ウイルス感受性・抵抗性牛を利用した新しい牛白血病制圧戦略」について、大分県農林水産試験研究指導センター畜産研究部の藤田達男主幹研究員が「ウシMHC遺伝子マーカーを指標とした牛白血病抵抗性遺伝子保有黒毛和牛種種雄牛の造成」について、最新の研究成果と共に現場に利活用できる情報を含めて講演しました。
 また理研ジェネシス主催のランチョンセミナーでは、同社の斎藤督顧問の座長のもと、理化学研究所分子ウイルス学特別研究ユニットの竹嶋伸之輔研究員が「BLV-CoCoMo-qPCR法を使って何がわかるか」についての講演を行い、BLV早期検査・対策の道筋について詳細に紹介しました。
 日本各地から100名を超える家畜産業関係者や自治体職員、獣医師、家畜衛生保健所職員などの参加者らは、BLVの克服法や家畜現場での効果的な対策方法のあり方などについて熱心に議論を重ねました。
 引き続き活発な研究開発とそこで得られた叡智の普及を行い、社会で問題となっている動物と植物ウイルス対策を精力的に押し進めて行きます。

農林水産省革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究):http://www.okayama-u.ac.jp/user/ibunyapj/index.html

<参考:革新的ウイルス対策技術分野叡智共有化プラットフォーム(過去3回)>
第13回 園芸学とウイルス学の異分野融合から新たな研究開発を目指す
第14回 革新的なウイルス対策で地域養鶏畜産業の保護・活性化を図る
第15回 日中の叡智でウイルスから動物と植物を守る
(参考:国際的な医農融合研究の強化促進を目指す 第31回岡山大学フューチャーセッション

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本事業とプラットフォームの取り組みを紹介する佐藤法仁岡山大学研究担当学長特命・URA兼内閣府科学技術政策フェロー

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牛白血病ウイルス感受性・抵抗性牛を利用した新しい牛白血病制圧戦略について紹介する理化学研究所の間陽子ユニットリーダー

 

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日本全国から100名を超える参加者らシンポジウムに参加